特定外来生物の繁茂抑制事業・農業被害抑制事業


湖沼や河川において環境への影響が懸念されている侵略的外来水生生物を調査し、新規繁茂抑制技術の開発を行います。

陸上に進出したナガエツルノゲイトウ
陸上に進出したナガエツルノゲイトウ

2020年3月まで、東京工業大学において、キノコに放射性セシウムが集まるしくみや、多摩川周辺のセミの抜殻をから土壌の金属汚染を調べるなどの環境保全に関係する研究開発を行ってきました。このような研究の中で、現在、日本の湖沼や河川には侵略的外来水生生物が蔓延し、水害の原因になること、水産資源や農産物に影響を与えていることを知りました。

 

当法人では、環境を調べ、知り、守る活動を具体的に実行することによって、美しい日本の自然を取り戻し、未来に残す活動を行っていきたいと考えています。現在は、外来生物の繁茂抑制試験のため、活動をアピールしたり、他の関係機関との連携を構築する活動を行っています。

 

今回は、NPO法人環境サステナブルリサーチラボ第一弾の事業として、日本の湖沼や河川において環境への影響が懸念されている、侵略的外来水生生物であるナガエツルノゲイトウなどを調査し、新規繁茂抑制技術の開発を行います。

侵略的外来水生植物ナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイとは?

オオバナミズキンバイ
オオバナミズキンバイ

侵略的外来水生植物であるナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイは、湖沼や河川などの水際に生育する水陸両生の多年生植物で、外来生物法の特定外来生物に指定されています。

 

繁殖力が非常に旺盛で、春から秋にかけて成長して面積を拡大していきます。また、駆除や生育の抑制が非常に困難で、分散能力も高く、漂着した葉や茎の断片からでも根を生やし、その場所で成長していきます。このため、農業用水路を経由しての周辺水系への拡大だけでなく、水稲生産者の規模拡大などにともない、機械の移動による周辺地域への拡大も懸念されています。

 

これらの水生植物の繁殖圏の拡大は、日本の水辺の既存生態系への影響、水質や水産資源や農産物への悪影響などが心配されています。

 

侵略的外来水生植物は、岸辺か ら広範な水面を占拠し、在来植物を駆逐、周辺の景観を変えてしまいます。また、繁茂した侵略的外来水生植物は、排水機場でつまりの原因となり、漁船などの航行障害や水害を引き起こしたり、水の流れを阻害し水質の悪化、泥質の沈着を招き、悪臭の原因となったりします。さらに、水田に侵入し稲作を阻害するだけでなく、陸上にも容易に進出し、農作業に影響を与え、私たちの生活を脅かします。

研究機関と連携し、侵略的外来水生植物の調査研究を行い、新たな生育抑制技術の開発を実施

NPO法人サステナブルリサーチラボの構成メンバーの有する知見、技術を活用、特定外来生物の取り扱いを許可された機関や大学などの研究機関と連携し、侵略的外来水生植物の調査研究を行い、新たな生育抑制技術の開発を実施します。

 

侵略的外来水生植物であるナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイに対して、繁茂抑制効果が期待できる材料を用い、ナガエツルノゲイトウを対象に室内で繁茂抑制試験を実施し、生育度、水中根の生成度、元素濃度変化などの結果から、繁茂抑制効果を評価、検証を実施します。将来的には、琵琶湖などのフィールドにおける実証試験を計画しています。

■ 試験実施スケジュール

試験計画策定 2020年8月

実験室内で繁茂抑制試験 2020年8月~12月

試験結果評価 2020年12月~2021年1月

対策法の具体化 2021年2月~

フィールド試験 2021年4月以降


既存の生態系や水環境の破壊、農作物への影響を回避し、従来の自然環境や私たちの生活を守れるように

特定外来生物は、許可が与えられた限られた機関でしか扱うことができませんが、私たちは、その許可を有する機関と共同で調査研究に取り組むことができること、さらに、侵略的外来水生植物であるナガエツルノゲイトウ、オオバナミズキンバイの対応が見込める技術要素を有していることから、今必要とされている新たな対応策を開発できる可能性があると考えています。

 

今回の調査研究により、侵略的外来水生植物の新たな繁茂抑制方法を確立できれば、普段あまり意識していない場所で進行している、侵略的外来水生植物による、既存の生態系や水環境の破壊、農作物への影響を回避し、従来の自然環境や私たちの生活を守れるようになります。

 

そして、今回の試験結果をもとに、琵琶湖などの実フィールドにおいて実証試験を実施し、侵略的外来水生植物であるナガエツルノゲイトウなどの新たな繁茂抑制方法を確立を目指します。

 

今回開発を検討している侵略的外来水生植物の繁茂抑制方法は、刈取作業などの駆除作業が困難であったり、陸上からのアクセス困難な区域など、現行の方法では駆除作業が困難かつ非効率な場所において効果を発揮する、全く新しい方法を目指しています。

 

この方法は、水辺や自然環境の保全活動における人的労働資源の枯渇にも対応する方法として期待できるため、これからの日本において自然環境を守り、次世代につないで行くためにも、必要不可欠な取組みです。

 

さらに、世界においても、侵略的外来水生植物による同様の問題が発生しており、日本だけでなく世界中で自然環境の保護に寄与する方法として確立したいと考えています。